2016年米国インフルエンサーマーケティングのトレンド

Pocket

influencer-marketing-2016

インフルエンサーマーケティングは、それ自体が新しいマーケティング手法ではないがソーシャルメディアなどのプラットフォームに影響されて、この数年間の動きを見てみると、各タームごとにも特徴がある。

米国のインフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるTraackr社による2016年のインフルエンサーマーケティングにおける主な動きは9つについて解説したい。



目次


前年の米国インフルエンサーマーケティングの動き

2015年は米国でインフルエンサーマーケティングへの認知が広まった年となった。

業種に関わらずソーシャルメディアを利用した広告は平均で26%のユーザーに購買意欲を促したとマッキンゼーもレポートで言及している。

特に、強い影響力を持った少数のインフルエンサーによるブランド宣伝が相乗効果的に拡散を促したという。

また、2015年の上半期にはインフルエンサーへのコスト1ドルあたりのEMV(アーンドメディア・バリュー)が9.60ドルとなった企業例もある。

これは前年通年度費140%増の数字だという。

2016年は各ブランド内でインフルエンサーマーケティングのプロセスが体系化され、効果の最大化が目指される年となるだろう。

その9つの特徴を見ていこう。


1.インフルエンサーマーケティング事業への投資拡大

米国大手ビジネスマーケティング会社のeMarketer、企業向けリーサーチ広告会社Altemeter Group、統計事業者Statistaといった企業が2016年のインフルエンサーマーケティングへの投資拡大を予想している。

前年のデータを見てみると、世界全体のソーシャルメディアの牽引者たちの中でインフルエンサーマーケティングに注目していないのは14%のみだった。

対して、すでにインフルエンサーマーケティングに着手している86%の内訳は以下のようになる。

  • 既に手法の最適化を目指し、成熟段階にある…35%
  • 計画および試験段階にある…32%
  • 2015年に初めて取り入れた…19%

投資の拡大により、下の2グループの数値は跳ね上がると予想できる。


2.CMOからの注目

インフルエンサーマーケティングは試行錯誤の段階を過ぎ、手法の確率と認知の拡大によって大きな投資対象となっている。

企業内のさまざまな機能を統合して戦略を編み出し、多岐にわたるニーズに応えるためCMO(マーケティング最高責任者)が計画を手がけることも増えている。

Marriottインターナショナルのグローバルクリエイティブおよびコンテンツマーケテイング部門の副部長、デイビット・ビーブは戦略的なインフルエンサーマーケティングとビジネスにおける先見の明を強調している。このほか、フィリップスASEANの前CMO、ダミアン・カミングスはインターネット上のライブコミュニケーションを通したソーシャルモニター、コンテンツ作成によるまったく新しいコマンドセンターを手がけている。


3.「グローカル」としてのインフルエンサーマーケティング

Traackrは以前、インフルエンサーマーケティングのプログラムのうち、52%がローカル志向、48%がグローバル志向だとするデータを作成している。

顧客の動きとしては、ローカルレベルの計画をグローバルレベルに発展させようとする流れが見て取れるという。

その一方で、グローバルな展開を見据えた計画だとしても、実施段階にあたっては現地との関係構築やコミュニケーションをもとにしたローカライゼーションは欠かせない。

このため、マーケターたちはグローバルインフルエンサーとローカルインフルエンサーのバランスをとりながら戦略を練ることが求められているのである。


4.セレブリティよりもニッチなインフルエンサーからの効果に期待

インフルエンサーといえば、これまではタレントやスポーツ選手のような、大きなフォロワーを持った人物像が想定されていた。

しかし、こうしたセレブリティのインフルエンサーのソーシャル上の発信はリーチ数は多くてもそれに比例したインパクトが得られるとは限らない。

それよりも、よりニッチなターゲットセグメントを高確率で捉えられるミクロインフルエンサーへの注目が集まっている。

Visit FloridaのGlobal Bran部門副部長、スザンナ・コステロも「私たちのビジネスはブランドについて、人々のソーシャル上の情報拡散とコミュニケーションを促すことだ。

それについては、セレブリティよりもマイクロインフルエンサーのファンのほうが、より熱のこもった発信をしてくれる」という。


5.効果を測定する

経験を積んだ進歩的なマーケターであればあるほど、効果測定のフレームワークとデータセットを重視している。

Orange Franceなどもこの手法によってマーケティングの幅を広めてきたという。

2016年の米国インフルエンサーマーケティングにおいては、より具体性の伴った目標が設定されるほか、ブランドの個々のキャンペーンから包括的なインパクトをもたらす発信まで、多岐にわたるKPIが設定されると予想される。

では、インフルエンサーマーケティングの測定において注目すべきはどういった点だろうか。

以下の3点が挙げられている。

  1. 測定基準の明確化
  2. …ソーシャル上での認知度やターゲットとなるインフルエンサーとの関係構築に具体性を持たせる

  3. 成果の測定
  4. …インフルエンサーのエンゲージメントや、ソーシャル上でどれほどのターゲットセグメントに周知できたかを推し量る

  5. ブランドとしての目標達成度
  6. …キャンペーンの成果を、売り上げやソーシャル上での認知度の変化から分析する


6.部門横断的なインフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングの領域横断的なプログラムが、2015年からブランド内のマーケティング部門で着手され始めている。

フレームワークが確立される中で、インフルエンサーマーケティングが企業内コミュニケーションやソーシャルマーケティング、パフォーマンスマーケティング、CRM(顧客関係管理)とも密接に関連し、ブランド内の様々なステークホルダーとの協力が欠かせないことが分かってきたためだ。

各ブランドにおいて、この流れはますます加速するだろう。


7.IRM(インフルエンサー関係管理)

これまで、ブランド内では顧客の満足度とロイヤリティを向上させるため、CRM(顧客関係管理)の戦略がとられてきた。

しかし、インフルエンサーマーケティングの台頭に伴い、今ではIRM(インフルエンサー関係管理)が注目され始めている。

その違いの大きな特徴は、ターゲットをこれまでブランドが抱え込んでいたすべての顧客から、一部のブランドインフルエンサーに移すことだ。

IRMは、インフルエンサーと透明性のあるコミュニケーションを行うことで、そのP2Pで率直な影響力によりフォロワーたちにブランドへのポジティブな印象をもたらすことだ。

CRMではフォーマット化された顧客とのコミュニケーションが通常だったが、IRMでは少数のインフルエンサーとより細やかなやりとりを行った方がROIに貢献すると考えられる。

つまり、CRMとIRMは全く別のアプローチが必要になる、というのがTraackrの見解だが、各タッチポイントでインフルエンサー、顧客と継続的にコミュニケーションを図るため、CRMとIRMを同時並行的に行うブランドが増えていくと考えられる。


8-1.コミュニケーション優先の継続的なキャンペーン −機能しなかったインフルエンサーマーケティング−

インフルエンサーマーケティングの初期段階においては、新製品の発売を告知したりインフルエンサーにアピールしようとする大々的なキャンペーンがほとんどだった。

しかし、インフルエンサーからの反応は薄く数も少なかったという。

また、インフルエンサーが何かブランドについて発信したとしても、フォロワーからおおきな反応は引き出せず、一時的なキャンペーとして終わっていた。

つまり、キャンペーンの主役は従来のマーケティング通りあくまでも「商品」だったのである。

現在のマーケティングではモノ自体よりもそのバックグラウンドとなるドラマが重視されるほか、フォロワーたちはインフルエンサーがビジネスとして投稿を行っているのか、それとも本当にそのブランドが好きだからこそ率直な意見をソーシャル上にアップするのか、非常にシビアである。

こうしたインフルエンサーマーケティングの性質をつかめていないゆえの試行錯誤だったと言える。


8-2.コミュニケーション優先の継続的なキャンペーン −人間中心のマーケティング−

インフルエンサーマーケティングの挑戦が続けられるうち、ブランドはインフルエンサーとのコミュニケーションに時間をかけ、信頼を構築してオールウェイズ・オンのマーケティングに切り替える方が効果的だと考えるようになってきた。「人間中心主義」の戦略である。

現在でも短期的なキャンペーンが行われることはあるが、ほとんどの場合、後の継続的な関係を見越したタッチポイントだという。

こうした動きについては、米国のビジネスニュースサイトAdWeeKも「インフルエンサーマーケティングによってブランドがインフルエンサーにもたらす4つの利点」とする記事を掲載し、各インフルエンサーにプライオリティを置くこどが成功の鍵だとしている。


9.インフルエンサーとリアルの世界で合う

ブランドとインフルエンサーは通常、インターネット上で出会う。

しかし、その後、相互信頼を通して真のパートナーシップを築くならば、「リアルの世界で合う(IRL)」が重要だとする声が増えている。

Traackrがロンドンで主催したビジネス・カンファレンスでは、コカ・コーラ社の西ヨーロッパ・オンラインコミュニケーション・ディレクター、スタニスラス・マグニャントやIBMソーシャル・コンサルティングのグローバルマネージング・パートナーでインフルエンサーマーケティング事業者Kredの前CEOでもあるアンドリュー・グリルもこの点を強調している。

ソーシャル上で「インフルエンサーをターゲットと見なすのではなく、パートナーとして扱うことがよりコンテンツの充実につながる」という意見もあり、Traackrも賛同して記事に引用している。


米国インフルエンサーマーケティングのトレンドのまとめ

Traackr社による以上の2016年米国インフルエンサーマーケティング予想を大きくまとめると、このようになる。

  • 認知の拡大と戦略のより先鋭化
  • 領域や部門横断的な手法の確立と柔軟な対応
  • CRMからIRMへといった人間中心主義のマーケティングへの転換

今回参考にした記事は2016年の1月10日付けで公開されたものだが、それ以降、米国はじめ世界のインフルエンサーマーケティングは大きな躍進を遂げている。

その中には日本市場も含まれており、こうした予測は今後の進路に大きな参考となるだろう。




参考:Traackr “The Top 9 Influencer Marketing Trands of 2016” http://www.traackr.com/blog/the-top-9-influencer-marketing-trends-you-should-be-doing


Pocket